サーマルカメラとは?仕組み・特長・活用シーンをわかりやすく解説
近年、工場の設備点検や夜間警備、物流倉庫の安全管理など、さまざまな現場でサーマルカメラの導入が広がっています。今回は、サーマルカメラの特長や導入事例、選び方について具体例を用いながら分かりやすく解説します!
目次
サーマルカメラとは

サーマルカメラ(サーモカメラ)は、サーマル(thermal:熱の)の名前の通り、熱を検知することのできるカメラです。
サーマルカメラの映しだす映像は、熱画像(サーモグラフィ)と呼ばれ、人やモノの温度が高いところは赤く、低いところは青く表示されます
これにより、温度計のようにある一点の温度ではなく、もの全体の温度を計測することができます。
光の有無に影響されないため、暗闇はもちろん、日中の明るい環境でも撮影ができ、発熱の有無や温度差を把握することが可能です。
そのため、設備の異常発熱検知や、店舗入り口での検温などに活用されています。
サーマルカメラの仕組み
サーマルカメラは熱を検知するカメラですが、温度計とは計測方法が大きく異なります。
人やモノは全て「遠赤外線」という目に見えない光を発しており、サーマルカメラにはその遠赤外線を検出するセンサーが搭載されています。
このセンサーが遠赤外線の強弱を検知し、モノの温度を計測することができます。
そして、計測した温度に合わせ画像処理で色を付けることで、視覚的に温度の分布をわかりやすくサーモグラフィで表示しているのです。
赤外線カメラとの違い
サーマルカメラと赤外線カメラは、どちらも赤外線を利用し、暗所での撮影が可能なカメラですが、映し出す対象が異なります。
赤外線カメラには赤外線を照射するLEDがついており、その反射光を捉えることで撮影を行います。
暗闇でも人や物の形や動きを白黒映像で確認できるため、防犯や監視用途に広く利用されています。
対するサーマルカメラは、物体が自ら発する遠赤外線を捉えるため、LEDによる赤外線照射は行いません。
サーマルカメラは「温度」を、赤外線カメラは「姿や形」を映し出すという点が大きく異なります。
赤外線カメラとは?仕組みやメリットについて解説
サーマルカメラには大きく2つの用途がある
サーマルカメラには大きく分けて「温度計測タイプ」と「熱源検知タイプ」の2種類があります。
それぞれ得意とする用途が異なるため、導入前に目的を明確にしておくことが重要です。
温度計測タイプ
温度計測タイプは、対象物の表面温度を数値として測定することを目的としたサーマルカメラです。
設定した温度の基準値を超えた場合にアラートを出せる製品もあり、体温検知や設備の異常発熱監視、製造現場での温度管理などに活用されています。
熱源検知タイプ
熱源検知タイプは、対象物の温度を細かく測定するよりも、熱の有無や位置を検知することを目的としたサーマルカメラです。
暗所でも人物や車両を検知しやすいため、防犯対策や侵入監視、夜間監視などのセキュリティ用途のほか、工場設備の異常発熱検知や防火管理の用途で利用されています。
サーマルカメラの特長
非接触で温度を計測できる
サーマルカメラは、温度計では計測の難しい、広い範囲の温度計測が可能です。
また、サーモグラフィは検知したモノを映像で出力しているので、撮影対象の温度変化をリアルタイムで確認できます。
暗闇でも撮影できる

サーマルカメラには撮影のための光源が一切必要ありません。
通常のカメラの場合、薄暗い時間帯や場所ではハッキリとした映像を映すことは難しいですよね。
しかし、サーマルカメラが捉える遠赤外線は撮影対象自体が発している光であるため、映像を映すための光源は不要です。
つまりサーマルカメラは一切の光源がない真っ暗闇や、反対に逆光など明るすぎる場所でも、問題なく安定して映像を撮影することができるカメラなのです。
透過性能が高い
遠赤外線は、通常の光と比べてより物体をすり抜ける性質が強いという特長を持っています。
そのため、サーマルカメラは霧や煙で視界が悪い状況でも、その向こう側の物体をハッキリと捉えることが可能です。
広範囲の温度を計測できる
サーマルカメラは、一般的なカメラと比較して、広い範囲の検知能力を持っています。
カメラの性能によっては、最大数km離れた人物の検知も実現可能です。
サーマルカメラを導入するメリット・デメリット
メリット
サーマルカメラを導入する最大のメリットは、非接触で広範囲の体温計測ができることです。
出入り口などの人が多い場所でも、カメラの前を通過するだけで温度を自動的に読み取れるため、短時間で多数の確認が行えます。
これにより、現場の手間を抑えながら人的コストの見直しにもつながります。
また、サーマルカメラが特に力を発揮するのは次のような場面です。
- 寒暖差の大きなものの温度把握
- 急激な温度変化のある場所、もの
- 高速で動く物体の温度測定
- 光源がない場所や、逆に明るすぎる場所
- 霧や煙で視界が悪い状況
- 開けた場所で遠くの場所まで検知したいとき
デメリット
サーマルカメラのデメリットは、導入にコストがかかることです。
一般的なカメラと比較すると、センサーや技術の違いから価格が高くなる傾向があります。
サーマルカメラの注意点
気温や設置環境の影響を受ける
サーマルカメラによる温度測定は、気温・風・湿度など周囲の環境条件の影響を受けやすい特長があります。
そのため、外部環境の影響が少ない場所に測定機器を設置したり、屋外から入室した人は一定時間経過してから測定を行ったりするなど、測定精度を高めるための配慮が必要です。
ガラス越しでは正しい計測が難しい場合がある
サーマルカメラは物体そのものの温度を直接測定しているわけではなく、対象物から放射される赤外線を検知して温度を推定しています。
そのため、ガラス越しに測定を行う場合は、ガラス表面の温度や周囲の光・熱の反射を拾ってしまい、対象物の温度を正確に取得できないことがあります。
また、屋外から差し込む日光や照明の反射がある環境では、実際の温度との差が生じる場合があります。
正確な温度測定を行うためには、可能な限りガラス越しを避け、対象物を直接撮影できる位置へ設置することが重要です。
体表面温度であり体温ではない
サーマルカメラで測定できるのは、体の表面から放射される熱をもとにした「体表面温度」であり、体温そのものではありません。
体表面温度は、気温や湿度、発汗、運動後の状態など周囲の環境や身体の状態によって変化するため、実際の体温と差が生じる場合があります。
サーマルカメラを導入する際は、測定結果を体温そのものと判断しないよう注意しましょう。
サーマルカメラの主な用途
体温測定
一番身近な用途といえるのが体温測定です。
非接触で検温が可能なため、感染対策に役立ちます。
さらに、体温測定は瞬時に完了するため、イベント会場や店舗の入り口での検温時、混雑が予想される場所でも人の流動がスムーズになることが期待できます。
国境警備・海上監視

サーマルカメラの暗視性能と長距離監視性能は、障害物が少なく、かつ夜間の警戒が重要な国境警備や海上監視に適しています。
霧や雨など視界が悪い環境でも安定した監視が可能になる為、夜間、悪天候に紛れている侵入者や、密輸船などを素早く察知する際に、サーマルカメラは力を発揮することができます。
工場や電気施設の機械管理

熱検知により工場・電気施設の機械を監視し、異常発熱を検知することで、故障や火災の危険を素早く察知できます。
飲食物等の生産ラインで、加熱による消毒・殺菌が正常に行われていることの監視にも役立ちます。
これらの他にも、研究目的での使用や、ガス漏れの検知、救難・救助など、様々な場面でサーマルカメラは使用されています。
サーマルカメラの活用事例
複数人数をカメラで同時に検温 日本電子専門学校様

課題
同時に多くの来校者が来た場合に入り口が混雑し密な状況になっている。
対応策
大型4Kモニター+マスク検知AI+体温が37.5℃以上、またはマスクを着けていない人が入室すると音声アラームを出す設定に。
効果
サーマルカメラの導入により、検温時間の短縮と接触機会の減少が実現し、スムーズな入退室と教室への移動が可能になった。
外部の方に対して対面での検温作業が不要になったことで、接触機会を大幅に削減できた。
導入事例-複数人数をカメラで同時に検温 日本電子専門学校様
サーマル・フュージョンで特定物体の検温作業

課題
誤検知率の高さ
対応策
サーマルカメラ+AIによる物体検知
効果
固定位置で取得するサーマルカメラの表面温度データを、検物体検出と連携させる事で映像内の特定物体の温度状態としての意味付けを可能とする事で、より実態に近い情報を導出可能と考えられる。
センサ・フュージョンとは?サーマル・フュージョンで特定物体の検温作業
AI連携による温度監視の事例
近年では、AI画像解析技術と組み合わせることで、単に温度を測定するだけでなく、対象物の識別や温度変化の分析まで行えるようになっています。
映像を通じた課題解決
特定エリアのみ異常温度を検知
あらかじめ監視したい範囲を指定しておくことで、そのエリア内で設定温度を超えた場合に通知を行えます。
例えば、機械設備の一部分や電気設備周辺のみを監視対象とすることで、不要なアラートを減らしながら効率的な監視が可能です。
サーマルカメラで異常体温を検知してメール通知する方法
人、車両、設備ごとの温度管理
人物・車両・設備などを識別し、それぞれの対象ごとに温度を管理できます。
例えば工場では設備の過熱監視、駐車場では車両の異常発熱検知など、用途に応じた細かな監視に活用されています。
特定物体の検温作業
発火リスクの早期検知
温度上昇の変化を継続的に分析することで、煙や炎が発生する前段階の異常発熱を検知できる場合があります。
バッテリー設備や工場設備、倉庫などでは、トラブルの早期発見につながり、被害拡大の防止に役立ちます。
サーマルカメラのタイプ
バレット型(ボックス型)

バレット(ボックス)型カメラは、ガンタイプとも呼ばれています。
サーマルカメラの中で最も一般的で、防犯カメラとしても広く知られている形状です。
バレット型カメラ(ボックス型カメラ)とは?メリットや設置のコツ!
ドーム型

ドーム型カメラは、名前の通りドーム状のカバーに格納されたカメラのことです。
基本性能はバレット型と同等でありながら、バレット型に比べてカメラの存在感を抑えることが可能です。
そのため、空間に調和しやすく、威圧感を与えることなく設置できます。
ドーム型カメラとは?その特長と利用例をご紹介!
タブレット型
タブレットとサーマルカメラの機能が一体となったタイプで、一体型やスタンド型とも呼ばれています。
商業施設や小売店の入り口などで幅広く利用されており、配線やPCなしで手軽に自動検温を実施できます。
ハンディ型
手に持って使用するタイプで、軽量で持ち運びやすいのが特長です。
導入コストを抑えられる利点がありますが、一度に大人数を測定することはできず、個別に検温する必要があります。
サーマルカメラの選び方
熱画像解像度で選ぶ
熱画像解像度とは、温度分布をどの程度詳細に表現できるかを示す指標であり、数値が大きいほど鮮明な画像が得られます。
現在、一般的に使用されている解像度は、160×120(19,200画素)ピクセルや320×240(76,800画素)ピクセル程度です。
フレームレートで選ぶ
フレームレートとは、1秒間に画面が更新される回数を示す値です。
この数値が低いと、映像はパラパラ漫画のようにぎこちなく表示されますが、フレームレートが高いほど、より滑らかな映像が得られます。
測定対象が固定されていて動かない場合は、6~9Hz程度のフレームレートの機種で十分です。
しかし、動いているものを測定する場合や、測定者自身が動きながら測定する場合は、25Hz以上のフレームレートの機種を選ぶとよいでしょう。
温度分解能で選ぶ
温度分解能は、カメラが検出できる最小の温度差を示す指標です。
例えば温度分解能が1なら1度単位、0.5なら0.5単位の判別が可能です。0.1℃や0.05℃といった微細な温度差を知りたい場合は、温度分解能を考慮して機種を選定する必要があります。
測定温度範囲で選ぶ
測定温度範囲は、カメラが測れる温度の範囲です。
測定したい対象の温度に合わせて選んでください。
測定したい対象の温度域を明確にし、それをカバーできるカメラを選択しましょう。
機能で選ぶ
基本的な性能はもちろんですが、以下の追加の機能についても確認することが重要です。
- WiFi
- アラート機能
- 検温速度調整
- 検温記録
- 防塵、防滴
- VCA検知
- コントラスト調整対応
- 音声検出
- 衝撃検知
必要な機能は、設置環境、運用目的、データの活用方法によって異なります。
詳しくは当社の取り扱い商品例をご覧ください。
サーマルカメラ
まとめ
- サーマルカメラは、遠赤外線の強弱を捉えることで、温度を計測するカメラである。
- 撮影に光源を必要としないので、真っ暗闇でも安定して長距離監視が可能。
- 他のカメラにはない特長やメリットがあるため、サーマルカメラの設置に適した場面が数多く存在する。
- サーマルカメラには様々な種類や機能が存在するため、設置環境や目的に合ったカメラを選ぶ必要がある。
最後までお読みいただきありがとうございました。
こちらの記事が、設置場所や使用目的に合ったカメラ選びの一助となれましたら幸いです。
今回の記事に関するご質問がある方や、サーマルカメラの導入をご検討中の方は、システム・ケイまでぜひお気軽にお問い合わせください!
